トランプさんと聞くと、皆さんはどんな印象を持つでしょうか。
力強い人。言い方がはっきりしている人。少し強引に感じる人。好きだという方もいれば、苦手だという方もいるでしょう。同じ人物を見ていても、受け止め方は人それぞれです。
今日は政治の正解を語るつもりはありません。ただ、トランプさんという人物を入り口に、「人に何かを伝えること」について考えてみたいと思います。
何を目指しているのか。何を変えたいのか。何を大切にするのか。
こうしたことを、自分の言葉ではっきり伝える。その姿勢については、会社を経営する私自身も考えさせられます。
頭の中にどれだけ立派な構想があっても、相手に伝わらなければ、一緒に動くことはできません。「こうしたいと思っていた」「当然わかっていると思った」。それだけでは、周りの人は困ってしまいます。

社長には社長の見えている景色があります。しかし、現場で施工している社員、電話を受けている事務員、入社したばかりの新人には、それぞれ違う景色が見えています。
立っている場所が違えば、気になることも違います。
社長が来年の目標を考えているとき、現場の社員は明日の施工をどう安全に終わらせるかを考えているかもしれません。事務員は、お客様への折り返しが遅れていることを気にしているかもしれません。新人は、誰に質問すればよいのかわからず、声をかけるタイミングを探しているかもしれません。
どれも会社にとって大切なことです。
だから私は、経営者が方向を示すことと、社員の声を聞くことは、両方必要だと思っています。
会社の行き先を決めるのは、経営者の大きな責任です。けれど、そこへ向かう道に穴が開いていることや、今の人数では無理があることを先に知るのは、現場にいる社員かもしれません。
その声を拾えなければ、立派な目標を掲げても、途中で足が止まってしまいます。
強い言葉を使えば、人が動くことはあるでしょう。しかし、その場で返事をすることと、納得して動くことは違います。「はい」と言っていても、心の中では不安が残っていることもあります。
私が目指したいのは、指示を待つだけの会社ではありません。
「社長、そこは違うと思います」
「その方法より、こちらのほうがよくないですか」
「今のままでは、お客様に迷惑がかかります」
そうした声が出てくる会社です。
もちろん、意見を言う側にも責任はあります。ただ不満をぶつけるだけでは、話が前に進みません。何が問題で、どうすればよくなるのか。すぐに答えが出なくても、まず事実を伝え、一緒に考える姿勢が大切です。
そして、聞く側にも責任があります。
「意見を言ってほしい」と言いながら、違う意見が出た途端に嫌な顔をしていたら、次から誰も話さなくなるでしょう。これは社長である私自身が、気をつけなければならないことです。
会議で静かなことが、必ずしも問題のない証拠とは限りません。言うことがないのか、言えないのか。その違いに気づける会社でありたいと思います。
こうして考えると、会社でのコミュニケーションは、家庭にも通じるものがあります。
家族だからわかるだろう。
毎日顔を合わせているから伝わるだろう。
長く一緒にいるから、今さら言わなくてもいいだろう。
そう思って省略した言葉ほど、実は必要だったりします。
「ありがとう」
「助かった」
「疲れていないか」
「今日はどうだった」
難しい説明より、そんな一言で気持ちがほぐれることもあるはずです。
仕事ではお客様に丁寧に説明できるのに、家に帰ると説明不足になる。社員には感謝を伝えようと思っているのに、身近な家族には照れくさくて言わない。そんなことがないか、私も自分を振り返る必要があります。
会社を支えてくれる社員には、それぞれ生活があり、家族があり、大切にしている時間があります。仕事中の姿だけで、その人の全部が見えるわけではありません。
よい仕事をしてもらいたいのであれば、その人が安心して働けることにも目を向ける。会社の成長を考えるときに、忘れたくない視点です。
少し話が変わりますが、私は車が好きです。
車の魅力は、見た目の格好よさだけではありません。長く付き合うほど、小さな変化にも関心が向きます。音、振動、調子。普段との違いが気になれば、原因を確かめたくなるものです。
調子が悪くなったとき、表面だけきれいにしても解決にはなりません。どこに原因があるのかを確認し、必要な手入れをする。大切に乗り続けるには、そうした地道な積み重ねが欠かせません。
会社も人との関係も、似ている気がします。
急に大きな問題が起きたように見えて、その前には小さな変化があったのかもしれません。報告が少し遅くなった。確認の回数が減った。いつも話す人が話さなくなった。「まあ、大丈夫だろう」と流していたことが、後からつながって見える場合もあります。
大きな問題になってから慌てるより、小さな違和感のうちに声をかける。そのほうが、解決の選択肢も増えると思います。
そして、この「小さな変化に気づく」ということは、私たち防除研究所の仕事にもつながっています。
例えば、建物の中で聞こえる物音。
お客様にとっては、「何か音がする」という一つの不安です。しかし、私たちはそこから確認を始めます。いつ聞こえるのか。どこで聞こえるのか。何日くらい続いているのか。ほかに気になる変化はないか。
音だけで原因を決めつけることはできません。お客様のお話と、現場で確認できる痕跡を合わせ、可能性を絞っていきます。
建物の外周を見て、隙間を確認する。必要に応じて天井裏や床下を調べる。配管や配線が通る場所、建材が接する部分などにも目を向ける。
見た目にはわずかな隙間でも、生き物にとっては出入り口になっている場合があります。
人間の目線では気にならない場所が、相手の目線では通り道になる。ここが、この仕事の難しさであり、専門性が求められるところです。
「ここまで見るのか」と思われる場所に、原因が隠れていることもあります。だから、思い込みで調査を終わらせてはいけません。
害虫についても同じです。
目の前に虫が一匹いたとき、その一匹への対応だけで十分なのか、それとも周辺を調べる必要があるのか。種類や発生状況、建物の使われ方によって、考えるべきことは変わります。
どこから入ったのか。
中で発生しているのか。
餌や水分となるものはないか。
隠れやすい場所ができていないか。
原因を確認せずに、毎回同じ処置をしていては、改善につながらないことがあります。薬剤を使う場合も、対象や場所に合ったものを、定められた方法で使用する必要があります。
大切なのは、目立つ作業をすることではなく、状況に合った仕事をすることです。
また、調査でわかったことを、お客様に伝えるところまでが私たちの役割です。
専門用語を並べれば、詳しく聞こえるかもしれません。しかし、お客様が知りたいのは、「今、どうなっているのか」「何をすればよいのか」「これから何に気をつければよいのか」ということだと思います。
確認できたことと、まだ確認できていないことを分けて説明する。写真を見ていただき、作業の目的を理解していただく。必要な対策と、その後の確認についても伝える。
見えない場所の仕事だからこそ、説明を省かないことが信頼につながります。
社員の皆さんにも、一つひとつの確認や説明に価値があることを、忘れないでほしいと思います。
お客様の話を最後まで聞くこと。施工後の片づけを丁寧にすること。気になった箇所を写真に残すこと。次の担当者が困らないように記録すること。
どれも派手な仕事ではありません。しかし、こうした積み重ねが、「防研に頼んでよかった」という気持ちをつくっていくのだと思います。
トランプさんの話から始まり、会社、家族、車、そして害虫の話まで来ました。
話題はずいぶん移りましたが、私の中ではつながっています。
自分の考えを言葉にする。相手の声を聞く。小さな変化を見逃さない。そして、必要なことを実行する。
経営者として大きな方向を示す責任を持ちながら、足元の小さなことにも目を向ける。その姿勢を大切にしていきたいと思います。
私たちが向き合うのは、一匹の虫や一か所の隙間だけではありません。その先にある、お客様の暮らしや仕事です。
安心して食事ができること。落ち着いて眠れること。気持ちよく働けること。そんな日常を支えるために、今日も一つひとつ、確かな仕事をする。
それが、防除研究所の害虫駆除です。

株式会社防除研究所
代表取締役 梅木厚生