一人の力を、チームの力へ。アジア大会から考える仕事の話

愛知・名古屋で開催されているアジア大会。9月19日に始まった大会も、10月4日の閉幕まで残りわずかとなりました。私たち防除研究所が本社を置く岐阜県からも近い地域での開催ということで、身近に感じる大会です。

スポーツには、人の気持ちを動かす力があります。

最後まで諦めずに走る姿。仲間に思いを託す姿。勝って喜ぶ姿もあれば、力を出し切れずに悔しさをにじませる姿もある。その一つひとつに、結果だけでは語れないものを感じます。

そして、こうした大きな大会をきっかけに考えるのが、スポーツと仕事の共通点です。

競技場と仕事の現場。場所も目的も違いますが、成果を出すまでの道のりには、重なる部分がたくさんあると思います。

まず、私が大切だと感じるのは、「本番に出るのは、普段の積み重ねだ」ということです。

試合の当日に、急に体力がつくわけではありません。大事な場面になったからといって、その瞬間に技術が身につくわけでもありません。

日々の練習、体調管理、振り返り。うまくできなかった動きを見直し、何度も繰り返す。その時間が、本番で発揮できる力を育てていくのでしょう。

これは、私たちの仕事も同じです。

お客様の前に立ったときだけ、丁寧な対応をしようと思っても、普段の習慣は出るものです。道具の扱い、挨拶、確認の仕方、言葉遣い。日頃から大切にしていることが、現場での行動につながります。

例えば、出発前に必要な資材や道具を確認する。作業内容を理解し、不明点を先に聞く。建物や周囲を傷つけないよう、養生の方法を考えておく。

どれも華やかな仕事ではありません。しかし、その準備ができているかどうかで、現場での余裕は変わります。

忘れ物があれば、取りに戻る時間がかかる。その間、一緒に作業する仲間やお客様を待たせることにもなる。たった一つの確認が、全体の流れを守っているのです。

「現場に着いてから頑張る」だけでなく、「現場で力を発揮できるように準備する」。この意識を、私たちはもっと大切にしたいと思います。

次に感じる共通点は、チームの力です。

スポーツでは、得点した選手や最後に勝負を決めた選手に注目が集まります。しかし、そこに至るまでには、つないだ人、守った人、相手の動きを読んだ人がいます。

個人競技でも、指導や練習、日々の生活を支える人たちがいるでしょう。表彰台に立つのは一人でも、その挑戦には周囲の力が関わっています。

会社も同じです。

施工を担当する社員がお客様から「ありがとう」と言っていただけるまでに、どれだけの人が関わっているでしょうか。

最初のお問い合わせを受ける人。お困り事を聞き取り、担当者につなぐ人。現場を調査して対策を考える人。日程を調整する人。資材や協力業者を手配する人。施工後の写真を整理し、報告書を整える人。

一人の仕事の先に、次の人の仕事があります。

現場の技術が高くても、約束した連絡が届かなければ、お客様は不安になります。電話対応が丁寧でも、現場への伝達が抜けていれば、同じ説明を繰り返していただくことになります。

それぞれが頑張っているだけでは、うまくいかないこともある。頑張りをつなぐことが必要なのです。

リレーのバトンを想像すると、わかりやすいかもしれません。

自分が速く走ることは大切です。しかし、次の走者に渡せなければ、チームとして前へ進めません。受け取る側も、準備をして待っていなければなりません。

仕事におけるバトンは、情報や約束です。

お客様が特に気にされていた場所。立ち入る前に声をかける必要がある部屋。作業時間の制約。調査では確認できず、施工時に確かめる必要があること。

「言ったはず」「聞いていない」で止まらないように、記録して渡す。受け取った側も、曖昧な点は確認する。

次の担当者が迷わず動ける状態をつくることまでが、自分の仕事だと考えられるチームは強いと思います。

そして、スポーツと仕事に共通するもう一つの大切なことが、失敗との向き合い方です。

真剣に取り組んでいても、思いどおりにならないことはあります。準備してきたのに結果が出ない。判断が遅れる。焦って普段ならしないミスをする。

そんなとき、誰か一人を責めて終わってしまえば、次につながりません。

なぜ起きたのか。どこで気づけたのか。何を変えれば、同じ失敗を減らせるのか。そこまで考えて、初めて振り返りになると思います。

防研の仕事でも、「気をつけます」という一言だけでは、改善が見えないことがあります。

確認する項目が曖昧だったのか。必要な情報が伝わっていなかったのか。道具や人数に無理があったのか。相談するタイミングを逃したのか。

原因によって、取るべき対策は変わります。

もちろん、一人ひとりが自分の行動に責任を持つことは必要です。同時に、会社として、間違いが起きにくい仕組みをつくる責任もあります。

私は、社員に挑戦してほしいと思っています。わからないことを質問し、自分なりの考えを出し、新しいことを覚えてほしい。

そのためには、経営者や上司が、相談を受け止める姿勢を持たなければいけません。報告を聞く前から怒っていたら、必要な情報ほど上がってこなくなります。

問題を早く伝えた人が、伝えてよかったと思える対応をする。これは、私自身も意識していくべきことです。

一方で、スポーツと仕事には、違うところもあります。

試合では、得点やタイム、順位で結果がはっきりする場面が多くあります。しかし、仕事の成果は、一つの数字だけでは見えません。

売上は大切です。施工件数も、作業時間も、会社を運営するうえで必要な数字です。ただ、早く終わったというだけで、よい仕事だったとは言えません。

安全に作業できたか。必要な確認をしたか。施工の品質を保てたか。お客様に内容を理解していただけたか。次につながる記録を残せたか。

そこまで含めて、仕事の結果を見たいと思います。

無理をして作業を続けることが、チームのためになるとは限りません。危険を感じたら止まる。体調がおかしければ伝える。自分だけで判断できなければ相談する。

長く力を発揮するためには、休息や体調管理も必要です。責任感のある人ほど抱え込んでしまうことがありますが、周囲に頼ることも、チームで働くうえで大切な力です。

また、成長の速さは、人それぞれです。

すぐにコツをつかむ人もいれば、繰り返しながら身につけていく人もいます。最初は質問ばかりだった社員が、一つの現場を任せられるようになる。苦手だった説明ができるようになる。先輩に言われる前に準備できるようになる。

そうした変化も、会社にとって大きな成果です。

周りと比べることが刺激になる場合もありますが、昨日の自分から何が変わったかにも目を向けてほしいと思います。

そして先輩や上司には、その小さな成長に気づいてほしい。できていないことを指摘するだけでなく、できるようになったことを具体的に伝える。それが、次の挑戦を後押しするはずです。

私たちの仕事には、表彰台も、大きな歓声もありません。

天井裏や床下など、人目につきにくい場所での作業もあります。わずかな隙間を確認し、状況に合った対策を考え、丁寧に施工する。終わった後には、写真や言葉で仕事の内容をお伝えする。

その先にあるのが、お客様の安心です。

夜、物音を気にせず休めること。衛生面の不安を減らして、お店を営業できること。建物を安心して使い続けられること。

そんな日常を支える仕事に、私たちは誇りを持ってよいと思います。

アジア大会に挑む選手たちから考える、準備の大切さ、仲間への信頼、失敗から学ぶ姿勢。そして、一人ひとりの力を、チームの成果につなげること。

私も社長として、目標を示すだけでなく、社員が力を発揮できる環境を整えていきたいと思います。

今日の確認を一つ丁寧にする。仲間への連絡を一つ早くする。お客様への説明を、もう一歩わかりやすくする。

その積み重ねで、防研というチームを強くしていく。

社員一人ひとりの仕事をつなぎ、お客様の「頼んでよかった」につなげるために、今日もそれぞれの持ち場で、よい仕事をしていきましょう。

株式会社防除研究所
代表取締役 梅木厚生