人の手と、新しい技術。ボウケンが目指す「アナデジ」の仕事

「アナログからデジタルへ」

仕事の効率化を考えるときによく出てくる言葉ですが、皆さんは、どのような変化を思い浮かべるでしょうか。

手帳に書いていた予定をスマートフォンで確認する。紙の報告書をデータで送る。電話で伝えていた内容を、写真と一緒に共有する。身近なところにも、仕事を便利にする方法はいろいろあります。

ただ、私たちボウケンの仕事を考えると、すべてが画面の中だけで済むわけではありません。

お客様のところへ伺い、建物を調べ、原因を考え、必要な施工をする。最後に作業内容を説明し、安心していただく。人が訪問し、その場所に合わせて技術を提供する仕事です。

そこで大切にしたいのが、「アナデジ」という考え方です。

ここでは、人の経験や手仕事、対話といったアナログの良さに、記録や情報共有を得意とするデジタルを組み合わせることを、アナデジと呼びたいと思います。

難しい話ではありません。人が力を発揮するために、便利な道具を上手に使おうということです。

例えば、お客様から「夜になると天井で音がする」とご相談をいただいたとします。

電話を受けたとき、単に「天井に物音」と記録するだけでは、現場の担当者が知りたい情報は足りません。いつからなのか。どの部屋で聞こえるのか。毎晩なのか。ほかに気になることはないか。

そして、お客様が何に困っているかも大切です。

眠れないほど気になっているのか。小さなお子様への影響を心配されているのか。以前も対策したのに、また音がして不安なのか。同じ物音の相談でも、受け止めるべき事情は違います。

ここは、人が丁寧に聞くところです。

そのうえで、聞き取った内容を決まった項目に記録し、訪問する担当者が事前に確認できるようにする。ここでデジタルが役立ちます。

担当者が事情を理解して伺えば、「最初からもう一度説明してください」という負担を減らせます。お客様にとっては、話がきちんと伝わっていること自体が、安心につながるはずです。

訪問後も、同じように考えられます。

建物の外周を歩く。隙間の位置を確認する。痕跡を探す。お客様に普段の状況を伺う。写真ではわかりにくい奥行きや、作業する場所の狭さも、自分の目で確かめる。

こうした現場の確認は、私たちの技術の土台です。

一方で、確認したことが担当者の頭の中だけに残っていたら、次の人には伝わりません。写真はあっても、どこを撮ったのかわからなければ、後から見直すのに時間がかかります。

そこで、写真に場所と内容を添える。確認できた範囲と、まだ確認できていない範囲を分ける。図面や見取り図に調査箇所を残す。

経験を記録に変えることで、一人が見てきた現場を、チームで理解できるようになります。

例えば、「北側の配管まわりに隙間あり」と記録する。さらに「侵入の痕跡は未確認」と添える。この一言があるだけで、隙間を見つけたことと、侵入口と判断したことを混同せずに済みます。

便利な仕組みを入れる前に、何をどう残すかをそろえる。地味ですが、仕事を変えるための大事な準備です。

では、ここにAIが加わると、どんな働き方が考えられるでしょうか。

ここからは、ボウケンで目指したい業務の姿としてお話しします。

まず取り組みたいのは、現場の情報を整理する仕事への活用です。

担当者が安全に記録できる場所で、その日の調査内容や作業内容を音声で残す。その記録をもとに、AIが報告書の下書きをまとめる。写真に付けた場所や作業の情報を使い、施工前、施工中、施工後の整理を補助する。

担当者と事務員は、その下書きを確認し、実際の作業と一致しているかを確かめて仕上げる。

こうした流れをつくれれば、同じ内容を何度も入力したり、写真の意味を確認するために連絡を繰り返したりする時間を減らせる可能性があります。

その時間を、お客様への説明や、次の現場の準備に使いたい。これが、私がAIに期待する使い方です。

ただし、AIがきれいな文章を作っても、内容が正しいとは限りません。

調査していない場所を「異常なし」とまとめたり、予定していた作業を「実施済み」と扱ったりすれば、大きな問題になります。文章の読みやすさと、現場の事実は、別に確認しなければなりません。

AIに整理を手伝ってもらい、私たちが確かめて責任を持つ。その役割を明確にして使う必要があります。お客様の写真や個人情報を扱う範囲も、会社として決めておくことが前提です。

見積りや提案の準備にも、活用の余地があると思います。

過去の似た現場を探す。確認すべき項目を整理する。説明文の下書きを作る。こうした準備をAIが補助できれば、担当者は、その建物に合う方法を考える時間を取りやすくなります。

しかし、似た建物だから同じ施工でよいとは限りません。下地の状態、周辺環境、足場の必要性、作業できる時間。現場ごとの条件を踏まえて、方法と金額を決めるのは私たちです。

AIの案を読んで、「この現場では違う」と気づける技術も、これまで以上に大切になるでしょう。

訪問日程の調整にも、新しい形が考えられます。

移動距離だけでなく、必要な技術、人数、資材、お客様のご都合を整理し、組み合わせの候補を出してもらう。そこに担当者が、現場の難しさや天候による影響を加えて判断する。

件数を詰め込むことだけが効率化ではありません。移動や待ち時間を減らし、無理なく、確実に仕事ができる予定を組むことが大切です。

施工後の対応も変えていきたいと思います。

工事が終わり、報告書を送ったら、それですべて終了というわけではありません。気になる音はどうなったか。新しい痕跡はないか。使い方や周囲の状況に変化はないか。

記録をもとに、確認が必要な時期を知らせる仕組みをつくる。そして、実際の様子は人が聞き、必要なら再訪問する。

こうした対応を続けられれば、お客様にとってボウケンは、困ったときだけ呼ぶ会社から、建物のことを継続して相談できる会社へ近づけると思います。

もちろん、すべてのお客様がデジタルでのやり取りを望まれるわけではありません。

メールで報告書が欲しい方もいれば、紙で見たい方もいる。スマートフォンで確認したい方も、電話で説明してほしい方もいます。

社内は便利にしながら、お客様には使いやすい方法でお伝えする。こちらの都合で複雑な操作をお願いしない。ここにも、アナデジの考え方が生きると思います。

さらに、未来に向けて大きな財産になるのは、社員の経験です。

ベテランが現場で何気なく行っている確認にも、理由があります。なぜ先に外周を見るのか。なぜその場所を撮影するのか。どうして、その材料や施工方法を選んだのか。

その理由を言葉と写真で残し、必要なときに探しやすくする。AIを活用して、蓄積した事例から学習用の問題や確認項目を作る。そうすれば、新人の予習や振り返りにも役立てられるでしょう。

一人の経験を、次の世代の出発点にする。関東、北関東、中部、関西、九州で働く仲間が、お互いの現場から学べる会社にしていきたいと思います。

社員の皆さんには、新しい仕組みを一度で完璧に覚えてほしいとは思っていません。

まず一つ、使ってみる。困ったところを伝える。現場に合わなければ修正する。会社も教える時間をつくり、使いにくさを社員の努力だけで埋めようとしないことが大切です。

導入の成果も、「AIを使った回数」では測れません。報告が早くなったか。確認漏れが減ったか。残業や二重入力が減ったか。お客様への説明がわかりやすくなったか。仕事が実際によくなったかを見ていきたいと思います。

ボウケンジャーである私たちの手は、これからも現場で必要です。状況に合わせて材料を加工し、建物を傷つけないように施工し、お客様の表情を見ながら説明する。その力を、さらに磨いていく必要があります。

そこにデジタルの記録と共有、AIの整理や提案の補助が加われば、人が抱え込んでいた負担を軽くしながら、仕事の質を高めていけるはずです。

アナログで培った力を、デジタルでつなぎ、AIで生かす。

便利になった分だけ、お客様と向き合う時間を増やす。経験を共有できた分だけ、仲間の成長を早める。

そんなアナデジの訪問サービスを、ボウケンらしく育てていきたいと思います。

株式会社防除研究所
代表取締役 梅木厚生