学生から社会人になる。アルバイトから正社員になる。転職をして、新しい仕事を始める。
人生には、働く立場が変わる節目があります。そのとき、仕事内容や給料には関心が向いても、「どんな考え方で毎日の仕事に向き合えばよいのか」は、意外と教わる機会が少ないのかもしれません。
これは、若い人だけの話ではありません。年齢を重ねても、仕事の意味や自分の役割がわからなくなることはあると思います。
「言われたことはやっている」
「毎日、きちんと出勤している」
「それ以上、何を求められているのだろう」
そう感じる人に、会社は期待する役割を具体的に伝えられているか。働く本人は、その仕事の目的を理解しようとしているか。今日は、その両方から考えてみたいと思います。
まず、正社員になることだけが、人生の正解ではありません。
長く一つの会社で働く人もいれば、時間を区切って働く人もいる。子育てや介護と両立する人、自分で事業を始める人もいます。
事情も目標も違う以上、働き方が違うのは自然なことです。雇用形態だけで、人としての価値や仕事への真剣さを決めることはできません。
ただし、どの働き方にも共通することがあります。
それは、仕事を引き受け、労働を提供し、その対価としてお金を受け取るということです。
お金のために働く。それは当然のことです。生活を守り、家族を支え、好きなことを楽しむためにも、収入は必要です。立派な夢や使命を、最初から全員が持っていなければならないとは思いません。
そのうえで、「自分の仕事が、誰の何に役立っているのか」を考えてほしいのです。
例えば、ボウケンの現場で清掃をする。
ごみを集めるだけなら、単純な作業に見えるかもしれません。しかし、お客様が安全に通れるようにする、施工後の状態を確認しやすくする、気持ちよく建物を使っていただく。そこには、いくつもの意味があります。
写真を撮る仕事も同じです。枚数をそろえるだけではなく、どこを調べ、何を施工したかが伝わるように撮る。その写真は、お客様への説明にも、次の担当者への引継ぎにも使われます。
目的がわかると、同じ作業でも工夫する場所が見えてきます。
学生から社会人になるときには、学んだことを、自分以外の誰かのために使う意識を育ててほしいと思います。
学校でも責任や協力は学びますが、仕事では、自分の確認不足が、お客様の時間や仲間の作業に直接影響する場面があります。だから、わからないことをそのままにしない姿勢が必要です。
社会人になるとは、急に何でもできる人になることではありません。
できないことを認めて聞く。教わったことを記録する。約束した期限に間に合わなければ、早めに相談する。間違いに気づいたら、隠さず伝える。
そうした行動を積み重ねて、任せてもらえる仕事を増やしていくことだと思います。
では、アルバイトと正社員は、何が違うのでしょうか。
「アルバイトは時間を売り、正社員は責任を負う」といった説明を耳にすることがありますが、私はそれだけでは不十分だと思います。
アルバイトにも、任された仕事を適切に行う責任があります。正社員にも、契約で定められた労働時間や働く条件があります。正社員だから、際限なく仕事を引き受けなければならないということではありません。
違いは、名称だけでなく、契約期間、勤務時間、担当する仕事、判断を任される範囲、配置変更の範囲などを見て考える必要があります。また、正社員とパート・有期雇用労働者との間に、不合理な待遇差を設けることは認められていません。
例えば、同じ現場で二人が同じ材料を取り付けていたとしても、一人は決められた施工を担当し、もう一人は事前調査、材料選定、工程管理、お客様への説明まで担当している場合があります。
目の前の作業が同じでも、任されている仕事の全体が違うことはあります。
反対に、アルバイトやパートという名称でも、後輩の指導や重要な判断を担っている人もいるでしょう。その場合は、実際の役割や貢献を見て評価することが大切です。
「正社員だから、このくらい当然」と曖昧に要求するのではなく、何を任せ、どこまで判断してよいのかを会社が示す。そして、その責任に見合う教育、権限、待遇を整える必要があります。
私がボウケンの正社員に期待したいのは、自分の担当業務を覚えた先で、少しずつ仕事全体を見る力を育てていくことです。
今日の施工だけでなく、次の点検で何を確認するか。自分が作った資料を、次の人が理解できるか。後輩が同じところで困らないように、何を伝えておくか。
任された範囲を土台に、周囲へ目を向けられる人になってほしいと思います。
ただ、それを本人の気合だけに任せるつもりはありません。経験の浅い人に、説明もせず「自分で考えろ」と言っても、何を基準に考えるのかわかりません。
会社が教え、本人が試し、一緒に振り返る。その繰り返しが必要です。
日々の仕事への向き合い方がわからないなら、まず三つのことから始めればよいと思います。
仕事を始める前に、「今日は何を、どこまで終わらせるのか」を確認する。
途中で迷ったら、「何がわからないのか」を言葉にして相談する。
終わった後に、「できたことと、次に直すこと」を一つずつ振り返る。
例えば、「先輩について現場へ行った」で一日を終えるのではなく、「今日は養生の理由がわかった。次は必要な道具を自分で準備できるようにする」と考える。
大きな目標がまだなくても、こうして一日の中に自分の課題を持つことはできます。
また、給料を受け取る責任について語るとき、会社側も忘れてはいけないことがあります。
働いたことへの賃金と、成果に応じた評価は、分けて考えなければなりません。売上が出なかったから、その時間の労働に価値がなかったという話にはなりません。
準備、点検、教育、事故の予防、事務処理。売上に直接表れなくても、会社を支える仕事はたくさんあります。
社員には成果を意識してほしい。同時に、経営者は成果につながる仕事の配分や仕組みを整え、見えにくい貢献も評価する。その両方がそろって、働く意欲が育つのだと思います。
では、日本経済や世の中にとって、一番よい働き方とは何でしょうか。
私は、全員が同じ雇用形態で、同じ時間働くことではないと思います。
一人ひとりが力を発揮できる条件で働き、必要な仕事を担い、その貢献に見合った報酬を受け取り、学びながら続けていけること。そうした働き方を増やすことが、社会にとってよい方向だと考えています。
長く働ける人だけに合わせた職場では、短い時間なら力を発揮できる人を生かしきれません。一方で、会社の中心となって技術を蓄積し、人を育てる役割も必要です。
働く時間や役割が違う人たちが、情報を共有し、お互いの仕事をつなぐ。その組み合わせを考えることが、これからの経営には求められると思います。
そして、働く時間の長さだけで頑張りを測らないことも大切です。
同じ品質の仕事を、無駄を減らして終えられるようにする。探し物や二重入力を減らす。必要な情報を先に渡して、やり直しを防ぐ。新しい道具やAIも、そうした改善に役立てていく。
そこで生まれた余裕を、待遇の改善、学ぶ時間、休息、次の挑戦へつなげたいと思います。
会社の利益と、働く人の暮らし。その両方がよくなる道を探すことが、経営者の仕事です。
働く皆さんには、自分の可能性を、今の肩書きや年齢だけで決めないでほしいと思います。
若くても、任されたことに誠実な人は信頼されます。中年になってからでも、新しい仕事を覚え、役割を広げることはできます。正社員でも学び直しは必要ですし、パートやアルバイトとして専門性を磨く道もあります。
自分に合った働き方を選ぶことと、引き受けた仕事に誠実に向き合うことは、両立できます。
最初から仕事を好きになれなくてもよい。まずは、わからないことを一つ減らす。約束を一つ守る。誰かが助かる仕事を一つする。

その積み重ねが、自信になり、技術になり、自分が選べる将来を広げていくのだと思います。
ボウケンも、働く人に責任を求めるだけでなく、その人が成長できる会社でありたい。努力や貢献が伝わり、報われる職場をつくっていきたいと思います。
どの立場で働くか。そして、その立場で、今日どんな仕事をするか。
その両方を大切にしながら、社員と会社が一緒に成長していける道を歩んでいきましょう。
株式会社防除研究所
代表取締役 梅木厚生