家の数から考える、日本のこれからとボウケンの未来

今、日本では、どれくらい新しい住宅が建てられているのでしょうか。

国土交通省が9月30日に公表した統計によると、2026年8月の新設住宅着工戸数は6万3,974戸。前年の同じ月より6.1%増えています。今年1月から8月までの合計は49万4,226戸で、前年同期比2.2%の増加でした。これは完成した家の数ではなく、工事に着手した住宅の戸数で、戸建てだけでなくマンションや賃貸住宅なども含まれます。

「増えているなら、住宅業界は順調なのでは」と感じるかもしれません。しかし、同じ8月の数字でも、季節的な変動を調整した指標では前月より2.7%下がっています。前年との比較と直近の勢いでは、見え方が違うのです。

私がこうした数字を見て考えるのは、「住宅が何戸増えたか」の先にある、暮らしの変化です。

家を建てる人がいる。その一方で、今の家を直して住み続ける人もいる。実家を相続したものの、どう管理するか悩んでいる人もいる。同じ住宅の話でも、ご家族によって事情はまったく違います。

新築の戸数だけを見て、私たちの仕事の将来を決めつけることはできないと思います。

総務省の2023年の調査では、全国の空き家は約900万戸、空き家率は13.8%でした。ただし、これには入居者を募集している賃貸住宅や売却用の住宅なども含まれ、すべてが放置された家という意味ではありません。

それでも、すでにある住宅を誰が管理し、どう使い続けるかは、大きな課題です。

新しい家には、これから始まる暮らしがあります。長く住んできた家には、積み重なった家族の時間があります。私たちが守る建物は、単なる箱ではありません。

「できれば、この家に住み続けたい」
「離れて暮らす親の家が心配だ」
「売るにしても、まず状態を確かめたい」

そんな気持ちに、専門家として何ができるのか。ここに、ボウケンのこれからの仕事を考えるヒントがあると思っています。

例えば、家を長く使うのであれば、外から見える部分だけでなく、床下や天井裏なども含めて状態を把握することが大切です。害虫や害獣の相談を入り口に、侵入箇所や周辺の傷みが見つかる場合もあります。

その際、私たちの専門範囲で対応することと、建築や設備の専門業者につなぐことを、きちんと分ける。何でも引き受けるのではなく、必要な相手と連携して、お客様が困り事を解決できるようにする。

そうした役割も、これから一層大切になるのではないでしょうか。

では、景気はどうでしょう。

内閣府の9月の月例経済報告では、日本経済は緩やかな回復が続く一方、中東情勢や自然災害の影響などへの注意が必要とされています。住宅建設については、おおむね横ばいという見方です。

ただ、経済全体の説明と、一軒のお客様の家計は同じではありません。住宅費、食費、教育費、車の維持費。暮らしには、いろいろなお金が必要です。その中で突然、害虫や害獣への対策費用が発生すれば、簡単に決められないのも当然だと思います。

だからこそ、私たちは見積書の金額だけをお渡しして終わってはいけません。

なぜこの工事が必要なのか。どの範囲を施工するのか。優先すべきことは何か。施工後は何を確認していくのか。

そこをわかりやすく説明して、お客様に判断していただく必要があります。不安をあおって契約を急がせるような仕事では、長いお付き合いはできません。

景気を理由に待っているだけでも、価格を下げ続けるだけでも、会社は強くならないと思います。必要な仕事を見極め、その価値をきちんと伝える力を磨く。それが、私たち自身にできることです。

そして、もう一つ。これからの仕事を考えるうえで外せないのが、AIです。

ここからは、私が考える未来の話です。

私は、AIによってボウケンの仕事の進め方も大きく変えられると考えています。特に期待しているのは、現場で得た情報を、次の仕事に生かしやすくすることです。

例えば、施工写真の整理。

写真が何十枚もあると、どの場所を撮ったのか、施工前なのか施工後なのか、何を説明すべきなのかを確認するだけでも時間がかかります。

撮影時に場所や作業内容を記録し、その情報を使ってAIが整理を補助する。担当者のメモから報告書の下書きを作り、人が写真と現場の事実を照らし合わせて仕上げる。

こうした流れを整えられれば、報告書をお届けするまでの時間や、事務員の負担を減らせる可能性があります。

ただし、見栄えのよい文章になったからといって、正しいとは限りません。実際には確認していない場所を「異常なし」と書いたり、行っていない作業を記載したりしては困ります。

現場で何を確認し、何を施工したか。その事実を残すことと、最後に人が確かめることは欠かせません。お客様の住所や写真などの情報も、会社で利用ルールを決めて扱う必要があります。

AIを役立てるには、まず私たちの記録の仕方を整える必要がある。私は、ここが大切だと思っています。

また、社員教育にも可能性を感じます。

ベテランが「この場所が気になる」と判断したとき、その理由まで記録する。建物のどこを見て、何を疑い、どのように確認したのか。結果として、何がわかったのか。

こうした事例を蓄積し、必要なときに探しやすくできれば、新人が現場に出る前の予習や、帰社後の振り返りに役立つはずです。

経験は、その人だけが持っていると、共有できる範囲に限りがあります。言葉や写真にして残すことで、離れた営業所の仲間にも渡せます。

関東、北関東、中部、関西、九州。それぞれの地域で働くボウケンの仲間が、互いの経験から学べる会社にしていきたいと思います。

さらに将来は、カメラやセンサーの情報を活用し、変化があった場所を優先して確認する仕組みも広がるでしょう。

定期点検の記録と、動物の出入りや活動の情報を組み合わせる。前回との違いを確認し、現場へ向かう前に調査の準備をする。クマ対策などでも、検知した情報を人の判断や地域の対応につなげる考え方が重要になると思います。

もちろん、検知の誤りや見逃しも考えて運用しなければなりません。機械を置けば、それだけですべて解決するという話ではありません。

通知を受けた後、誰が確認し、どう動くのか。現場で役立つ仕組みにするには、その先まで考える必要があります。

こうして考えると、ボウケンの業務は、施工だけで完結する形から、調査、記録、予防、経過の確認までをつなぐ仕事へ、さらに広げていけると思います。

一度対応したお客様に、その後の状況を確認する。建物の使い方が変わったら、点検する場所も見直す。過去の施工内容を引き継ぎ、担当者が変わっても適切に対応できるようにする。

これは、これから取り組みを深めたい方向です。

社員の皆さんには、AIの話を聞いて、「自分の仕事はどうなるのだろう」と感じることもあるかもしれません。

仕事の中身は、変わっていくと思います。資料を一から入力する時間が減る一方で、内容を確かめる力、お客様に説明する力、現場で判断する力は、より大切になるはずです。

事務の仕事でも、入力や転記に追われる時間を減らせれば、お客様への連絡や、施工担当者への確認を早くできる。現場でも、過去の記録を探す時間が減れば、調査や準備に時間を使える。

私は、そうした変化を目指したいと思っています。道具を導入して終わりにせず、社員が使えるように学ぶ時間をつくることも、経営者の役目です。

住宅事情も景気も、私たちの都合に合わせて動いてはくれません。AIの進歩も、立ち止まって待ってくれるわけではないでしょう。

だからこそ、世の中の変化を知り、お客様の困り事を聞き、私たち自身の仕事を見直していく。

新築の家にも、長く住み続ける家にも、そこで安心して暮らしたいという思いがあります。その思いに応えるために、現場の技術と、新しい道具の両方を磨いていく。

ボウケンは、これまで積み重ねてきた経験を、これからの時代に役立つ形へ育てていきたいと思います。

株式会社防除研究所
代表取締役 梅木厚生