一本のギターから考える、音楽と人生、そして世の中の未来

おはようございます。

今日は、アコースティックギターの話から、ものづくりの未来、音楽と人生、そして私たちの仕事について考えてみたいと思います。

マーチン、ギブソン、ヤマハ、ヤイリ、ヘッドウェイ。さらに、テイラーやタカミネなど、ギターの世界にはさまざまなブランドがあります。

名前を聞くだけで、好きな歌手や懐かしい曲を思い浮かべる方もいるでしょう。若い頃に憧れた一本、初めて自分のお金で買った一本。ギターには、楽器としての価値とともに、その人だけの物語が重なっていきます。

木でできた胴体に弦を張り、指で弾く。基本の仕組みは素朴ですが、そこから生まれる音は実に豊かです。力強く弾けば勢いが伝わり、そっと爪弾けば静かな気持ちがにじむ。同じ曲でも、弾く人によって違って聞こえる。そこに、この楽器の面白さがあります。

マーチンやギブソンに憧れる気持ちには、音だけでなく、好きな音楽と出会った記憶もあるのではないでしょうか。「あの人のように弾いてみたい」。そんな思いが、最初の一歩になることもあります。

一方で、身近な存在としてヤマハのギターを思い浮かべる方もいるでしょう。海外の有名ブランドにも、日本のメーカーにも、それぞれの魅力がある。選べる楽しさがあること自体、豊かなことだと思います。

岐阜県可児市には、K.ヤイリの工房があります。また、長野県松本市で生まれたヘッドウェイは、生涯にわたって弾き続けてもらえるギターづくりを掲げています。地域に根を張ったものづくりが、人の人生に寄り添う音を生み出している。このことに、私は企業経営にも通じる魅力を感じます。(yairi.co.jp, deviser.co.jp)

ただ、どのブランドが一番なのかは、簡単には決まりません。

同じメーカーでも、形や材料、設計によって違いがあります。抱えたときの大きさ、指の届きやすさ、自分の声との相性もある。評判の良い一本と、自分が毎日手に取りたくなる一本が、必ずしも同じとは限りません。

これは、世の中の価値観にも似ています。

人からどう評価されるかを気にするあまり、自分に合っているかを忘れてしまうことがあります。仕事も趣味も暮らしも、周囲の点数だけでは決められません。自分が何を大切にし、どんな時間を過ごしたいのか。ギター選びにも、その人の生き方が少し表れる気がします。

では、これからギター業界はどうなっていくのでしょうか。

私は、良い楽器をつくる技術と同じくらい、「弾く楽しさを続けてもらう工夫」が大切になると考えています。

憧れて買ったものの、コードを押さえられず、ケースに入れたままになってしまう。忙しくなって、いつの間にか手に取らなくなる。せっかく楽器と出会っても、そこで関係が止まってしまうのは、少しもったいないですね。

最初の一曲を弾けるまで支えてくれる教室。気軽に相談できる楽器店。弾きやすく調整してくれる技術者。そして、上手下手を気にせず参加できる演奏の場。こうした存在まで含めて、音楽を続けられる環境なのだと思います。

メーカー、販売店、修理の職人、先生、演奏する人。それぞれの仕事がつながって、一本のギターが長く使われる。業界の未来を考えるとき、販売本数に加えて、弾き続ける人がどれだけ増えるかという視点も必要でしょう。

新しい技術にも可能性があります。

ヤマハのトランスアコースティックギターには、外部のアンプなどを使わず、ギター本体で音に響きを加える仕組みがあります。「TAG3 C」では、自分の演奏を録音して繰り返し再生し、そこへ音を重ねることもできます。木の楽器とデジタル技術を組み合わせ、演奏の楽しみを広げているのです。(yamaha.com)

今後、AIが練習を支える場面も、さらに広がるかもしれません。

その人の苦手な部分に合わせて練習方法を提案する。好きな曲を弾けるようになるまで、小さな段階に分けて案内する。一人で練習していても、行き詰まったときに相談できる。そんな使い方ができれば、途中で諦めてしまう人の背中を押せるでしょう。

その一方で、自分の指で弦に触れ、うまく鳴らなかった音が鳴るようになる喜びも、大切にしたいと思います。

昨日できなかったことが、今日は少しできる。短いフレーズを弾けただけで、誰かに聴いてほしくなる。その小さな達成感は、完成した音楽を聴く喜びとは、また違ったものです。技術が進むほど、こうした体験への入り口が広くなる未来を期待します。

ギター業界の未来には、自然との付き合い方も関わってきます。

木を使う楽器である以上、材料をどこから調達し、どう大切に使うかが問われます。マーチンも、責任ある木材調達や代替素材の活用、廃棄物の削減などを進めています。良い音を次の世代へ届けるためには、その音を生む自然も引き継ぐ必要があるのです。(martinguitar.com)

さらに、長く使えるものを、修理しながら使う文化も大切です。

K.ヤイリは、可能な限りメンテナンスと修理に対応する方針を掲げています。製品を送り出した後も、その一本と向き合う。こうした姿勢は、使う人にとって心強いものです。(yairi.co.jp)

良いものをつくり、手入れをし、次の人へ渡す。その流れには、資源を大切にする意味も、技術を受け継ぐ意味もあります。新品を生み出す仕事と、今あるものを生かす仕事。その両方がきちんと評価される社会であってほしいと思います。

そして、音楽の価値は、楽器や産業の話だけでは収まりません。

昔の曲を耳にして、当時の景色が急によみがえることがあります。学生時代の友人、家族との時間、頑張っていた頃の自分。普段は思い出さない気持ちに、音楽が触れることがあります。

言葉にしにくい感謝も、寂しさも、歌を通すと素直に受け止められる。忙しい一日の終わりに、好きな曲を一曲聴くだけで、ようやく自分の時間に戻れたと感じることもあるでしょう。

私たちは仕事をしていると、売上、利益、時間、効率など、数字で物事を考える機会が多くなります。会社を続けるために、どれも大切です。ただ、人生には数字では測りきれない豊かさもあります。

家族と同じ曲を聴いて笑う時間。友人と集まり、少し音を外しながら歌う時間。誰に発表するわけでもなく、自分のためにギターを弾く時間。その時間があることで、明日も頑張ろうと思える人もいるはずです。

若い人には、上手になる前の時間も楽しんでほしいですね。そして、年齢を重ねた人にも、「今からでは遅い」と決めつけてほしくありません。

仕事では経験のある人でも、初めて楽器を持てば初心者です。指が思うように動かず、教えてもらっても、すぐにはできない。そんな経験をすると、仕事を覚え始めた人の戸惑いにも、少し優しくなれるのではないでしょうか。

自分が学ぶ立場に戻ることは、人に教える姿勢を見直す機会にもなります。

音楽を誰かと合わせる場面にも、学ぶことがあります。自分の音を出しながら、相手の音を聴く。声が聞こえにくければ、少し音量を下げる。違う役割を持つ人が、お互いに耳を傾けることで、一つの曲が形になります。

会社も、社会も、それぞれの力を生かすためには、相手を知ろうとする姿勢が必要なのだと思います。

私たちボウケンの仕事にも、技術と人の感覚の両方が欠かせません。

知識やデータを使い、現場を確かめ、お客様の話を聴く。同じように見えるご相談でも、建物の状態や暮らし方、不安に感じていることは違います。一件一件に合った対応を考え、その後も安心して暮らしていただけるように支える。その積み重ねが信頼になります。

AIやデジタル技術を活用していく未来でも、お客様の小さな言葉に気づける人でありたい。経験を次の世代へ伝えながら、新しい方法にも目を向ける会社でありたいと思います。

一本のギターの向こうには、森があり、職人がいて、音楽を届ける人がいて、それを聴く人の暮らしがあります。

世の中の仕事も、そうして誰かの人生につながっています。私たちの仕事の先にも、家で安心して過ごし、好きな音楽を楽しめる日常がある。そのことを忘れずにいたいですね。

今日もそれぞれの場所で力を尽くし、一日の終わりには、好きな音楽に耳を傾ける。そんな時間も大切にしながら、人生を重ねていきたいと思います。

株式会社防除研究所
代表取締役 梅木厚生