経験と発想。未来をつかむために、私たちが持っているもの

おはようございます。

仕事をしていると、経験の大切さを感じます。

初めて見る人には分からないことでも、経験のある人は、わずかな違いに気づくことがあります。「ここは確認しておいた方がよい」「この進め方では、後で困るかもしれない」。そうした判断には、これまで積み重ねてきた仕事が生きています。

一方で、経験の少ない人の何気ない一言に、はっとさせられることもあるでしょう。

「どうして、この作業を二回するのですか」
「最初に写真を共有しておけば、もっと早くなりませんか」

長く続けてきた人には当たり前でも、初めて見る人には不思議に映る。その疑問が、仕事を変えるきっかけになることがあります。

今日は、経験と発想について考えてみたいと思います。この二つは、未来をつかむために、私たちが持っている大切な道具ではないでしょうか。

経験というと、何年働いたか、何件の現場を担当したかという話になりがちです。もちろん、積み重ねた時間や件数には意味があります。ただ、同じ仕事を経験しても、そこから何を受け取るかは、人によって違います。

うまくいった理由を考えたか。失敗したときに、どこで判断がずれたのかを確かめたか。次に同じ状況になったら、何を変えるのかを決めたか。

その振り返りによって、経験は次に使える力になるのだと思います。

例えば、お客様への説明が十分に伝わらなかったとします。「難しいお客様だった」で終わらせることもできます。しかし、専門用語が多すぎなかったか、写真を見せる順番は適切だったか、お客様の一番の心配を聞けていたかと考えれば、改善できる点が見えてきます。

一つの出来事から、次の仕事に役立つものを持ち帰る。その積み重ねが、経験の厚みになっていくのでしょう。

だから、失敗も大切に扱いたいと思います。

失敗そのものを歓迎するわけではありません。お客様にご迷惑をかけたのであれば、まず対応が必要です。そのうえで、起きたことを曖昧にせず、次に生かせる形で残す。

本人だけが反省して終われば、別の人が同じことでつまずくかもしれません。何が起き、どうすれば防げるのかを共有することで、一人の経験を会社全体の力にできます。

ただし、頼りになる経験にも、気をつけたい面があります。

「前はこれでうまくいった」
「長年この方法でやってきた」

そう言えることは強みですが、今回も同じ条件とは限りません。建物も、お客様の暮らしも、使える道具も違います。以前の成功をそのまま当てはめてしまうと、目の前の変化を見落とす可能性があります。

経験があるからこそ、早く判断できる。その一方で、経験があるからこそ、確認する前に分かったつもりになることもある。私自身も、この点は忘れないようにしたいと思います。

長く仕事をしてきた人ほど、ときどき「初めて見るつもりで確かめる」ことが必要なのでしょう。

そこで力になるのが、発想です。

発想というと、誰も思いつかなかった大きなアイデアを出すことのように感じるかもしれません。しかし、日々の仕事を良くする発想は、もっと身近なところにあります。

探している時間が長いなら、置き場所を変えてみる。説明に時間がかかるなら、見せる写真をそろえておく。毎回同じ質問が来るなら、最初の案内に答えを加える。

困っていることに気づき、「こうしたらどうだろう」と考える。その小さな工夫も、大切な発想です。

ボウケンの仕事にも、考えるきっかけはたくさんあります。

現場で撮った写真が、後から見たときに分かりにくい。調査をした担当者しか、状況を説明できない。書類を受け取った人が、もう一度電話で確認している。

こうしたことが起きたとき、忙しさのせいにするだけでは、同じ手間が続きます。

どの写真があれば伝わるのか。撮影時に何を記録しておけばよいのか。次に受け取る人は、何を知りたいのか。そこを考えると、現場と事務の両方が助かる方法を見つけられるかもしれません。

特別な発明でなくても、毎日の負担が少し軽くなれば、その効果は積み重なります。

現在進めているタブレットへの移行も、経験と発想の両方が必要な仕事だと思います。

紙で仕事をしてきた人には、現場で何が起きるかという知識があります。お客様への説明のタイミング、確認していただく内容、予定どおり進まなかったときの対応。その経験は、新しい仕組みを使いやすくするために欠かせません。

一方で、紙の作業を一つも変えず、そのまま画面の中へ移すだけでは、手間が十分に減らない場合もあるでしょう。

一度入力した情報を、次の書類にも使えないか。必要な写真を、その場でまとめられないか。事務所へ戻る前に、次の担当者が確認できないか。

現場の経験をもとに、仕事の流れを考え直す。そうすることで、道具を導入した意味が生まれてくるのだと思います。

ここで大切なのは、使い慣れない人の声をよく聞くことです。

操作に迷っている人を見て、「慣れればできる」で終わらせず、どこで止まったのかを確かめる。説明が足りないのか、画面が分かりにくいのか、実際の仕事の順番と合っていないのか。

つまずいた人の経験が、次に使う人の助けになることもあります。困っているという声は、改善の材料でもあるのです。

新しい発想を生かすには、意見を受け取る側にも準備が必要です。

「それは前にやった」
「現場を知らないから、そんなことを言う」

最初からそう返してしまえば、次の意見は出にくくなります。以前試したことがあるなら、どんな条件で行い、何が難しかったのかを伝える。そのうえで、今回なら変えられる部分がないかを考える。

経験のある人が背景を説明し、別の視点を持つ人が方法を提案する。そんな話し合いができれば、お互いの力が生きてきます。

若い人にも、経験を積んだ人にも、遠慮なく学び合ってほしいと思います。

新しい道具の使い方は後輩から教わり、お客様への説明の組み立て方は先輩から教わる。年齢や役職だけで、教える側と教わる側を固定する必要はありません。

私自身も、経営者だから何でも分かっているという姿勢にはなりたくありません。自分が知らないことを知っている社員の話を聞き、必要であれば考えを変える。その姿勢を持ち続けたいと思います。

ただ、発想は思いついた段階では、まだ可能性です。

良さそうに見える方法でも、実際に使えば別の手間が増えることがあります。一人には便利でも、後の工程を担当する人には負担になる場合もあるでしょう。

だから、試すことと、確かめることが必要になります。

例えば、報告書の作り方を変えるなら、限られた案件で試してみる。作成時間だけでなく、内容の抜けがないか、お客様に伝わるか、確認する人が困らないかを見る。

安全や品質に関わる部分は、事前に十分確認する。そのうえで、直せる範囲から試し、結果を見て広げていく。そうすれば、発想を実際の改善につなげやすくなります。

「試してみたけれど、期待したほど良くならなかった」という結果にも意味があります。どの条件では合わなかったのかが分かれば、次の判断に使えるからです。

発想を試すことで、新しい経験が生まれる。その経験から、また別の発想が出てくる。この繰り返しを続けられる会社でありたいですね。

そして、発想の材料は、仕事の中だけにあるわけではありません。

買い物をした店の分かりやすい案内。修理を頼んだときの丁寧な説明。趣味を通じて知った、道具を長く使う工夫。家族から言われた、率直な感想。

そうしたものに触れたとき、「自分たちの仕事にも取り入れられないだろうか」と考えることで、見慣れた仕事にも新しい見方ができます。

仕事のことばかり考えて行き詰まったときには、少し離れて過ごす時間も大切でしょう。違う場所へ行き、違う人と話し、普段気づかないものを見る。そこで感じたことが、後になって仕事とつながることもあると思います。

未来をつかむための道具は、高価な機械や新しいシステムだけではありません。

気になったことを書き留めるメモ。分からないことを尋ねる一言。現場をよく見る目。自分と違う意見を聞く時間。そして、小さく試してみる行動力。

私たちは、すでにいくつもの道具を持っています。大切なのは、それを日々使い、磨いていくことなのでしょう。

ボウケンがこれからも必要とされる会社であるために、積み重ねてきた技術を大切にしながら、仕事の進め方には工夫を重ねていきたいと思います。

経験のある人が安心して知識を伝え、新しく加わった人が素直に疑問を口にできる。出てきた意見を誰が言ったかだけで判断せず、お客様や仲間の役に立つかを一緒に考える。そんな会社を目指していきます。

昨日までの経験を、今日の工夫に使う。そして、今日試したことを、明日の力にする。

未来は、一度の大きなひらめきだけで決まるものではないと思います。目の前の仕事に問いを持ち、少しずつ良くしていく。その積み重ねで、私たち自身の未来をつくっていきたいですね。

株式会社防除研究所
代表取締役 梅木厚生