おはようございます。
仕事をしていると、「あの人はできる」「この人は、なかなか成長しない」という言葉を耳にすることがあります。
同じ日に入社し、同じ説明を受けても、すぐに動ける人と、何度か確認しながら覚える人がいる。同じ経験年数でも、任せられる仕事の範囲に違いが出る。会社を経営していると、そうした違いにどう向き合うかを考えさせられます。
早く仕事を覚え、自分で考えて行動してくれる人は、頼もしい存在です。周囲が助けられる場面も多いでしょう。
一方で、覚えるまでに時間がかかっている人を、今の姿だけで判断してよいのか。そこには、慎重でありたいと思っています。
今日は、「できる人」と「成長がゆっくりな人」について、働く側と育てる側の両方から考えてみます。
まず、「できる」とは、何ができることなのでしょうか。
作業が速いこと。知識が豊富なこと。売上をつくれること。お客様の話を丁寧に聴けること。ミスに気づけること。仲間が困っているときに手を貸せること。
仕事には、いくつもの力が必要です。

説明が上手でも、約束した期日を守れなければ、信頼は続きません。作業が速くても、確認不足でやり直しが生じれば、周囲に負担がかかります。反対に、目立つ発言は少なくても、準備や記録を確実に行い、現場を支えている人もいます。
「できる人」という一言でまとめる前に、どの仕事の、どの部分を見て評価しているのかを、はっきりさせる必要があると思います。
成長についても同じです。
一度説明を受ければ覚えられる人もいれば、自分で手を動かすことで理解が進む人もいます。全体の流れが分かると動きやすい人もいれば、一つずつ確実に覚える方が合う人もいるでしょう。
また、初めて取り組む本人にとっては、道具の名前も、仕事の順番も、判断の基準も新しいことです。教える側には一つの説明でも、覚える側には、いくつもの課題が詰まっている場合があります。
そこで「前にも言ったよね」と言う前に、どこまでは理解できていて、どこで止まっているのかを確かめたいのです。
例えば、ボウケンの仕事で、調査後の見積書の提出が遅い人がいたとします。
ただ「もっと早く出してください」と伝えても、それだけで改善するとは限りません。
現場で必要な情報を集めきれていないのか。施工方法の判断に迷っているのか。金額の確認に時間がかかっているのか。それとも、他の仕事との優先順位を決められていないのか。
同じ「提出が遅い」という結果でも、原因によって必要な支援は違います。
現場の情報不足が原因なら、調査時の確認項目を見直す。判断に迷っているなら、相談する相手とタイミングを決める。仕事が集中しているなら、分担や予定の組み方を考える。
成長の遅さを本人の性格だけで説明してしまうと、改善できる仕組みまで見落としてしまいます。
ただし、本人にも向き合ってほしいことがあります。
周囲が何度も教えてくれることを、当然だと思わないことです。教える人も、自分の仕事の時間を使っています。その時間を、次の行動につなげてほしいと思います。
忘れやすいなら、後から使える形でメモを残す。分からなかったところを、その日のうちに整理する。同じ作業をする前に、前回の注意点を確認する。教えてもらった方法を試し、その結果を報告する。
覚える速度は人それぞれでも、こうした行動は、自分で工夫できる部分があります。
私は、質問が多いことだけで、仕事ができないとは思いません。分からないまま進めて、後から大きなやり直しになる方が困ります。
ただ、質問の仕方は少しずつ成長させていけるでしょう。
「分かりません」から、「ここまでは確認しましたが、この部分の判断がつきません」へ。さらに、「私はこの方法がよいと思います。理由はこうですが、どうでしょうか」へ。
自分がどこまで考えたのかを伝えられるようになると、教える側も助言しやすくなります。やり取りの中で、判断の理由も学べます。
もちろん、安全に関わることや、取り返しのつかない作業では、考え込んで相談を遅らせる必要はありません。迷った時点で止まり、確認する。その判断も、仕事をするうえで大切な力です。
「できる人」を見ていると、自分の力だけで何でも片づけているように見えることがあります。しかし、必要な場面で人に聞き、周囲の知識を借り、早めに準備しているからこそ、円滑に進められる場合もあります。
できる人から学ぶなら、結果だけでなく、その前の行動を見たいですね。
現場へ向かう前に何を確認しているのか。お客様の話をどう記録しているのか。いつ相談しているのか。仕事が終わった後、次に備えて何をしているのか。
その人を「才能があるから」で終わらせず、まねできる行動を一つ見つける。そこから始めれば、自分の仕事にも取り入れやすくなります。
教える側も、自分ができる理由を言葉にする努力が必要です。
「見れば分かる」「普通は気づく」。経験を重ねると、そう言いたくなることがあります。しかし、その「普通」は、長年の経験によって身についたものかもしれません。
どこを見て、何を気にして、どう判断したのか。それを具体的に伝えることで、経験は次の人が使える知識になります。
そして、部下や後輩を育てるときには、一度に求めすぎないことも大切だと思います。
調査も説明も見積もりも報告も、すべて完璧にしてほしい。その気持ちは分かりますが、課題を並べられた本人が、何から直せばよいか分からなくなることもあるでしょう。
まずは、現場から戻ったら必要事項を整理する。次に、迷う案件は決めた時間までに相談する。できるようになったら、お客様への説明を改善する。
目標を具体的にし、振り返る時期を決める。前回より良くなった点と、次に直す点を共有する。そうした積み重ねが、本人にも周囲にも成長を見えやすくすると思います。
成長がゆっくりな人にとって、周囲との比較はつらいことがあります。
後から入った人が先に仕事を任される。自分だけ何度も確認される。焦るほど、質問しづらくなったり、できていないことを隠したくなったりするかもしれません。
そんなときこそ、今の状況を正直に伝えてほしいと思います。できていないことが分かれば、支援を考えられます。分かったふりをされると、周囲も任せ方を間違えてしまいます。
そして、昨日の自分との違いも見てほしいですね。
前は一人で準備できなかったものを、今日は準備できた。指摘されていた確認漏れが減った。お客様の質問に、一つ自分で答えられた。
小さな進歩でも、仕事を任せられる土台になります。本人がそれに気づけるように、上司や先輩も、変化を具体的に伝えていきたいと思います。
一方で、会社には、お客様に約束した品質や期日を守る責任があります。「人それぞれだから」と、課題を曖昧にしたままにすることはできません。
必要な支援を行い、目標と期間を共有したうえで、改善を確かめる。それでも難しい場合には、担当する仕事や教え方、配置が合っているかを見直す必要があります。
ある仕事で苦戦していることが、その人のすべてを表しているわけではありません。役割が変わることで力を発揮する可能性もあります。本人の希望を聞きながら、会社としても任せ方を考える。そのためにも、日頃からよく見て、話をすることが大切なのでしょう。
また、できる人への配慮も忘れてはいけません。
頼れるからと仕事を集め、さらに教育まで任せ続ければ、その人が疲れてしまいます。教える時間を予定に入れる、仕事量を調整する、育成への貢献を評価する。会社として支える仕組みが必要です。
支援を受ける側も、できるようになったことは自分で引き受け、少しずつ周囲の負担を減らしていく。お互いの努力が見える関係をつくりたいと思います。
ボウケンには、さまざまな経験や得意分野を持つ人がいます。その違いを生かしながら、一人ひとりが自分の役割を果たせる会社にしていきたい。
すぐに結果を出す人には、さらに力を伸ばせる機会を。時間をかけて学ぶ人には、課題に合った支援と、成長を確かめる機会を。その両方を用意することが、経営する私の役割でもあります。
「できる人」「できない人」という言葉で、人を見る目を止めたくありません。
今、何ができているのか。何につまずいているのか。本人は何を変え、会社は何を支えるのか。そこまで具体的に考えてこそ、次の一歩につながるのだと思います。
今日、自分の仕事で一つ改善する。そして、誰かの小さな成長にも気づく。
そんな毎日を重ねながら、私自身も、社員とともに成長していきたいと思います。
株式会社防除研究所
代表取締役 梅木厚生